Revive
僕は昔から、困っている人を見るとすぐに助けたくなる性格だった。
何か自分にできることはないかとすぐに考え、そして行動する。
それは僕の父親の教えでもあり、それが当たり前のことだと思っていた。
父は僕が小学生の頃からいつも、
「人と人は助け合い、支え合いながら生きていく生き物だ」と言った。
僕はその言葉が忘れられず、気付いた時には誰かを助けていた。
僕自身も父と同じように、人間とはそうあるべきだと信じている。
中学まではとても順調だった気がした。
みんなは僕のことを認めてくれていたし
僕のことを優しい人だとか頼りになる人だとか言った。
しかし、高校生になった僕は
人を助けたことにより、いじめられることになる。
いじめられている生徒を助けたことで、
今度は僕がイジメのターゲットになり、
さっきまでいじめられていた奴らは平気で見て見ぬフリをした。
気づいたら僕は1人だったし、
手を差し伸べてくれる人など、どこにもいなかった。
みんなが僕のことを無視し続けるあの光景は
もう2度と思い出したくない過去だ。
僕は間違ったことをしていないはずなのに1人になり、
それがなぜなのかをずっと考えた。
僕がこれまで見てきたイジメの内容は、
高校の時と比べれば可愛いものだった。
今まで助けることしかしてこなかった僕は結局、
孤独になった。いくら考えてもその理由が分からないのが辛かった。
僕がそのことで悩んでいることを先生には話したのだが、状況は変わらなかった。
間違っていたのは父の言葉ではないか、と僕は思った。
人が人を助ける必要など、どこにもなくて
ただ自分のためだけに生きればそれで良いのだ。
人を助けた結果がこれなのだから、そう考えるしかない。
しかし僕はそれでも、見て見ぬフリはできなくて、
きっとこれからも人を助けようとするだろう。
僕は1人取り残され、どうしようもなくなった時ついに父に相談をした。
今までのことを全て話し、父が僕に言ったあの言葉は間違っているのかもしれない
ということも伝えておいた。
それを聞いた父は驚くことを口にする。
「私の言ったことは間違っていないし、
お前が今までしてきたことも決して間違っていない。
そして、お前が今私に相談をしてきたことも間違ってなかった。
・・・転勤することに決まったんだ。
今日その話をしようと思っていたところだ」
「転勤?」
僕は父の顔を見続けた。
「お前は新しい学校で、1人でも良いから本当の友達を見つけるんだ」
本当の友達と聞いて、僕はふと
自分にはそう思える友達が今までいただろうかと考えてしまった。
それから父は、もし転勤することが決まっていなかったとしても
僕を転校させるつもりでいたことを話した。
家族にはいつも明るく振る舞っていたつもりだったが、
僕がずっと悩んでいたことを父は見抜いていた。
今考えると、きっとそれが僕の運命だったんだ。
思い出したくない過去も、
今考えると全て意味のある出来事だった。
そして、これから僕がしようとしていることも
必ず意味のあることなんだ。