Revive
少年の夢野がいつまでも僕の隣に座っているので心配になってた。
「暗くなってきたし、そろそろ子供は家に帰らないと」
僕がそう言うと夢野は頷いた。
「そうだね」
夢野は立ち上がると僕を見た。
「もうお兄さんには会えないのかな」
「どうだろうね。もしかしたら明日もここにいるかもしれないよ」
僕がそう言うと、夢野は嬉しそうに笑って走っていった。
そういえば前に新一さんが、夢野は兄を欲しがっていたと言っていた。
1人っ子だった夢野に本当の兄がいれば、状況は変わっていただろうか。
そんなことを思いながら遠くなる夢野の小さな後ろ姿を
見えなくなるまでずっと見つめていた。
僕がこの夢から覚めない限り、ずっとここにいられるのだろうか。
もしかしたら、今すぐに夢から覚めるかもしれない。
僕はそんなことを考えながらベンチに寄りかかって目を閉じる。
僕はあれからどうなってしまったんだろう。
夢野は?伊達は?
僕は大量出血が原因でもうすぐ死ぬのかもしれない。
僕がこの場所にいるのは、死が近いことを意味しているのだろうか。
もし死んだら、空野翼として生きることも、夢を見ることもできない。
僕は消えるのだ。何もかもなくなる。怖さというよりも、信じられない気持ちが強かった。
消えることが、どのような感覚なのか想像ができない。
全くの無とは、どのようなものなのだろう。
少年の夢野にも、高校生の夢野にも、もう会えなくなる。
暗くなっていく空の下で、僕は気が付いたら眠っていた。