Revive
どこへ向かえば良いのかも分からず、ただひたすら走り続けた。
ここがどこなのか全く分からない状態で
夢野の家を探すことなど不可能なはずなのに、それでも僕は夢野の家を探そうと
必死になって走っている。走り続けることしかできなかった。
しかし、もしもこれで夢野の家にたどり着けたとしても、
僕はまたあの夢で見た光景を見なければならないことになる。
その時、どこか遠くの方から声がしてきた。
耳を澄ましていると、その声はだんだん大きくなっていき
「空野!」と僕の名前を呼んでいることが分かった。
何度も僕の名前を叫んでいる。
「誰だ・・・?」
すると僕は、何かに躓いて地面に倒れた。
雨が地面を叩き付けている音がする。
その間もずっと誰かが僕を呼ぶ声が聞こえていた。
僕はずっと、ここにいるわけにはいかない。
僕を呼んでいる人の元へ行かなくてはならない。
その時、辺りが突然真っ白になった。
何もない、ただ真っ白な世界がどこまでも続いている感じだ。
顔を上げると僕の前に1人の少年が立っていた。
夢野だ。
「空野お兄さん、僕達もう会えないのかな?」
夢野は寂しそうに僕を見ながら言った。
「もうすぐ、1人になっちゃう気がするんだ・・・」
と、夢野は小さな声で言う。
僕はゆっくりと立ち上がった。
僕を呼ぶ声が更に大きくなっていく。
「誰かが、僕を呼んでるんだ。もう行かなくちゃ・・・」
だんだんと頭が痛くなり、僕は頭をおさえた。
「・・・・・・」
気付いたら、夢野は泣いていた。
溢れる涙を必死で止めようしているするその姿が
僕を辛く、悲しくさせる。
僕は痛みを堪えながら、ゆっくり夢野に近付いた。
「夢野・・・・・・1人じゃないよ。
これから先、どんなに辛いことがあっても・・・、
絶対に1人じゃないから・・・」
(忘れないでくれ。僕達はいつかまた、必ず会える)
「・・・さよならではないよ」
僕は夢野の頬に触れ、微笑んだ。
「また・・・会える?」
その純粋な瞳から溢れ出す涙は、僕が見たことのない
綺麗すぎる涙だ。
僕が今いるこの場所は、夢野の心の中なのだろうか。
この何もない真っ白な空間は、夢野の純粋さを表しているようだった。
何色にも染まるこの綺麗な白が、真っ黒な闇で染まってしまわぬように・・・
僕はずっと笑顔で夢野を見続けた。
しばらくすると夢野も、ようやく笑顔になってくれた。
「空野!空野!」と、僕を呼んでいる声をしっかりと聞きながら、
僕は笑顔で目を閉じる。