Revive
しかし、そんな日に限って田口と磯谷は部活がないと言い出し、
一緒に帰ろうと誘ってきた。タイミングが悪すぎる、と僕は思った。
隣でそれを聞いていた秋山が、僕の腕を掴んできた。
「今日は、私と一緒に帰る約束をしているの」
秋山は優しく田口と磯谷にそう言った。
僕は2人の顔を見れなかった。
きっと驚いているに違いない。
秋山がそう言うのだから仕方ない。
「空野君、行こう」
秋山に腕を引っ張られ、僕達は教室からでた。
しばらく黙ったまま歩き続ける。
僕のすぐ隣には秋山がいる。
そのことが信じられなかった。
そもそも僕は女子と2人きりで帰ったことがない。
「もっと前から、こうして空野君と話をする時間が欲しかったの」
秋山はそう言うと僕を見る。
「空野君は私の隣の席にいて、いつでも話をすることはできたけど、
2人で話をしたかったの。2人きりで。」
秋山は、自分が何を言っているのか分かっているのだろうか。
そんなことを言われたら誰でも勘違いする。
僕はドキドキしたまま秋山の話を黙って聞いていた。
「あのクラスにはもう慣れた?もう1ヵ月くらいたったよね?
空野君が転校してきてから。」
秋山は嬉しそうに話す。
「空野君が転校してきて凄く嬉しかった。
ねぇ、空野君の話色々聞かせて?
前の学校のことでも良いし、
空野君の趣味とか、色々!」
秋山にそう言われ、僕は頷いたが
前の学校での話は正直あまり話したくなった。
僕が黙っていると、秋山は不思議そうに僕を見ていた。
「あっ、実はさ、僕も秋山に色々と聞きたいことがあってさ」
僕はあまり自分の話をしたくなかった。
「私に、聞きたいこと?」
秋山は一瞬表情が曇る。
「あ、ほら!秋山って凄く可愛いし、好きな人とか、
付き合ってる人とかいるのかなぁって。」
僕は本当にずっと気になっていたことを聞いた。
すると秋山は首を振る。
「好きな人がいて、付き合ってる人がいるなら
こうして空野君と2人きりで帰ったりしないよ。」
秋山はさっきよりもテンションが下がっていた。
今の秋山には好きな人も付き合っている人もいないということなのか。
秋山のことを好きな男子は沢山いるというのに。
田口と磯谷の顔が頭に浮かぶ。
それなら今こうして2人きりで帰っている僕にもチャンスがあるのかもしれない。
僕はそんなことを考えていた。
「でも、さっきの秋山の言い方だと、
まるで僕に興味があるような言い方だね。」
僕は笑ってそう言うと、秋山は顔を輝かせる。
「うん!そうだよ。
だから空野君について色々知りたい!
できればもっと仲良くなって、
何でも話せる仲にないたいの。」
僕は顔が熱くなる。
秋山にとって、その言葉は何を意味しているのだろう。
「だって空野君は・・・」
秋山はそう言うと立ち止まって僕を見る。
僕も秋山を見る。
「転校生だから。」
秋山の笑顔が僕の瞳に映る。
「転校生だから」という言葉が突き刺さる。
僕はしばらく何も言えなかった。