文学少女とスイートプリンス
恋愛ものは読みません
パラ――――
図書室には本のページをめくる静かな音が流れた。
文学少女、と周りの人たちには言われている。
けど、そこまでいろいろな文学を知っているワケでもなく、ただの本好きな女子高生。
わたし、雨宮 柚雪(あめみや ゆゆき)
わたしの日課は、放課後に図書室で本を読むこと。
と言っても、ここは旧図書室だから滅多に人は来なくてわたし一人。
だからここが気に入っていたりするのですよ。
「ねぇ、ゆゆ」
……間違えました。
確かに気に入っている場所ではあるけど、一人じゃなかった。
「ゆゆー?」
「なんですか、甘樫(あまかし)くん。読書の邪魔です」
「あ。やっとこっち見てくれた」
顔を横に向けるとにっこりと笑顔を浮かべる甘樫 リオンくん。
通称スイートプリンス。
ミルクティー色のふわふわした柔らかい髪に、タレ目がちな綺麗な茶色の瞳。
甘いルックスと声と、ついでに名前からとってスイートプリンス、らしい。
……そこまで名前の由来に興味はないですけど。
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