文学少女とスイートプリンス
「本を返して下さい」
「やだ。返すとゆゆがオレに構ってくれないでしょ?」
「子供ですか」
「ゆゆの前だけだよ」
にこにこした笑顔にわたしは悟る。
あ、これ、何を言っても無駄ですね。
はぁ、と諦めて帰ろうと準備をする。
本は……明日返してもらえばいいか。
どうせ明日も来るんでしょうし。
「ゆゆー、帰るの?」
「帰りますよ」
あなたに本をとられてしまったんですから。
「やだ。オレと話そ?」
「なんでです、きゃっ!!」
ぐっと腰を引き寄せられて、すっぽりと温かいものに包まれる。
甘いベルガモットの独特な香り……
「……何してるんですか」
「んー?ゆゆ抱きしめてるー」
そんなの本人ですから分かりますって。
「わたしはその理由を聞きたいのですが」
と、言いながら、なんだかんだでこの腕の中は嫌いじゃない、かもしれない。
あったかい……わたしは冷え性だから、ここは落ち着く。