文学少女とスイートプリンス



「本を返して下さい」


「やだ。返すとゆゆがオレに構ってくれないでしょ?」


「子供ですか」


「ゆゆの前だけだよ」



にこにこした笑顔にわたしは悟る。



あ、これ、何を言っても無駄ですね。


はぁ、と諦めて帰ろうと準備をする。



本は……明日返してもらえばいいか。


どうせ明日も来るんでしょうし。



「ゆゆー、帰るの?」


「帰りますよ」



あなたに本をとられてしまったんですから。



「やだ。オレと話そ?」


「なんでです、きゃっ!!」



ぐっと腰を引き寄せられて、すっぽりと温かいものに包まれる。


甘いベルガモットの独特な香り……



「……何してるんですか」


「んー?ゆゆ抱きしめてるー」



そんなの本人ですから分かりますって。



「わたしはその理由を聞きたいのですが」



と、言いながら、なんだかんだでこの腕の中は嫌いじゃない、かもしれない。


あったかい……わたしは冷え性だから、ここは落ち着く。





< 3 / 10 >

この作品をシェア

pagetop