文学少女とスイートプリンス
あ、という甘樫くんの声になんですか?と言葉を返す。
「ゆゆ、いい匂いがするー」
いえいえ、あなたの方がいい匂いしますって。
というか……
「く、くすぐったいのでやめて下さい」
髪の毛が首にあたってくすぐったいんですよ。
後ろから抱きしめられているから顔は見えないけど、きっと笑ってる。
笑い声は聞こえてますし。
「いいじゃん。減るもんじゃないでしょ?」
「減ります減ります。わたしの精神力集中力その他もろもろ削ぎ落とされてます」
「ゆゆ照れてるの?かわいいねー」
……今も確実に減りましたね。
半分ぐらい余裕で減りましたよ。
というか、ちゃんと話を聞きましょうよ甘樫くん。
話が通じてないですよ。
「ゆゆー、こっち向いてー」
「いやです。首痛くなります」
「えー」
向いてよー、とまるっきり子供のような催促を無視する。
そうじゃないとめんどくさいことに……もうなってますけど。