文学少女とスイートプリンス



あ、という甘樫くんの声になんですか?と言葉を返す。



「ゆゆ、いい匂いがするー」



いえいえ、あなたの方がいい匂いしますって。


というか……



「く、くすぐったいのでやめて下さい」



髪の毛が首にあたってくすぐったいんですよ。



後ろから抱きしめられているから顔は見えないけど、きっと笑ってる。


笑い声は聞こえてますし。



「いいじゃん。減るもんじゃないでしょ?」


「減ります減ります。わたしの精神力集中力その他もろもろ削ぎ落とされてます」


「ゆゆ照れてるの?かわいいねー」



……今も確実に減りましたね。


半分ぐらい余裕で減りましたよ。


というか、ちゃんと話を聞きましょうよ甘樫くん。


話が通じてないですよ。



「ゆゆー、こっち向いてー」


「いやです。首痛くなります」


「えー」



向いてよー、とまるっきり子供のような催促を無視する。


そうじゃないとめんどくさいことに……もうなってますけど。





< 4 / 10 >

この作品をシェア

pagetop