文学少女とスイートプリンス



しばらくすると声が拗ねたようなものに変わる。



「……じゃあいいよ。後ろで我慢する」


「どういう意味ですか」



いったいこの甘すぎるスイートプリンスはわたしに何をするつもりなんだ。


わたしとしてはぎゅうぎゅうにされているだけで、結構いろいろ限界に近いのですが……


さっきので精神力もろもろも削り落とされましたし。



はぁ、と盛大にため息をこぼそうとするけど『ちゅっ』と耳元で聞こえた軽い音にため息を飲み込んだ。


ついでに悲鳴も飲み込みました。



「あれ、珍しい。ゆゆが声出さない」



そりゃ今のはびっくりしすぎていきなりすぎて、声をあげる暇さえなかったですよ。



「ゆゆの声、聞きたいなー」



……と言われると、出したくなくなるのが心情ですよ、甘樫くん。



「ゆゆー」


「……」


「ゆゆー」


「………」


「ゆーゆー」


「…………」



しまいには体を揺すりだしましたよ、この人。




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