【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「うわぁああぁああぁ!!!!!
はっっ!!!?」
再び目を開いたとき
私は汗だくで呼吸が乱れていた。
…また、夢?
てか、やば、叫んじゃった私…
けどよかった…
あんな虫追っかけて死ぬなんてバカなことあっちゃいけない。
けど、なんだったんだあの夢は
屋上から落ちちゃうのに…それまでのくだりいらなくない…?
夢って
その人の欲望を映したりするらしいと聞いたことがある。
…わ、私はそんな変態じゃあないっ…
それに
キノが死んじゃうなんて
望むわけないじゃん。
てか
どこよ、またここは
鼻腔を突くような薬の香り
真っ白な壁に真っ白な天井。
私の隣には病院によくあるような液体の入ったパックがぶら下がっているスタンド。
そこからのびたチューブの先には
キノがいた。
頭に包帯を巻いたキノは
定期的に寝息をたてて
綺麗な顔をして目をつぶっていた。
こっちは
夢じゃないらしい。
急にあの瞬間の映像がフラッシュバックしてきた。
キノが川に頭から落ちていく映像
キノの言葉
キノの表情
鮮明に思いだし終わったあと涙が落ちた。
安心からとなんともいえない不安からの涙が
こんなこと
その瞬間まで起こるなんて考えもしなかった。
いつも笑っていて
正直に気持ちをいってくれるキノ
あのときいったいどんな気持ちでいたんだろう。
想像もつかない。
未だにわからない。
私はキノのことをこれっぽっちも知らない。