【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
キノが眠りについたのを見届けて時間を確認しようと辺りを見回す。
病室は他にもベットはあるものの患者はキノしかいなかった。
椅子から立ち上がり半自動ドアを音をたてぬよう慎重に開き廊下に出た。
この廊下は暗いが向こうの方は電気がついている。
そちらに向かおうとすると肩を叩かれた。
振り向きその人物を確認すると私は反射的に頭を下げた。
「こんにちは、真さん」
「どうも、もう9時過ぎだよ」
柔らかく微笑む若い男性。
キノと一緒に住んでいてキノのおじさんにあたる人だ。
年齢は不詳だがたぶん相当若い。
大学卒業したばかりという印象を持つほど若々しい印象だ。
「隆也、目覚ました?」
「さっき一瞬覚ましてまた寝ました」
「そっか、あ、これパン、食べる?」
「…いただきます」
コンビニの袋からジャムパンを差し出され両手で受け取った。
真さんは壁に背をつけてあくびをしていた。
「冬ちゃん、平気?キノが病院に運ばれてからずっと居るでしょ」
「寝てたのであまり記憶にないです」
「そっか。長谷川麻広くんて子が助けてくれて連絡くれたんだよ。」
「マヒロくんが?」
「うん、マヒロ君はさっき帰って行ったけれど」
「そうですか」
マヒロくんが助けてくれたんだ。
なんだかキノが落ちてからの記憶がぼんやりしていてはっきり思い出せない。