【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
そうしてエリちゃんは口を開く。
「とりあえず
フーちゃんの言うとおりいつも通りがいいと思う」
「うん」
「…けど、
フーちゃんはキノくんのことを知りたくないの?」
エリちゃんの言葉に
ドキリとする。
きっと知らない方がいい気がするし
真さんだってあんな風に言っていたから知ってはいけない話なのかもしれない。
キノは確実にどこかに地雷を隠している。
そこを追い詰めると
キノは精神的にヤバくなるらしい。
キノはあまり自分の昔話をしない。
きっと何かがあるからだ。
キノのこと
もっと
知りたいに決まってる。
だけど
知る手段がないんだもの。
「出来ることなら、知りたいけれど
今はいい。
今はキノがまたいつも通りで居てくれるのが
一番いい…」
「うん、うん、
そうだよね」
「もう、嫌なの
あんな思い一生したくない。
私が、死んでしまう、」
思い出すだけで心拍数が上がる。
美しい星をバックに
キノが不安定に立っていて
揺らめく水面に移る星に向かって
キノは頭から落ちていった。
いやだ
いやだ
頭のなかは
そればかりで埋まってしまって
胸がズキンズキンとうずいて痛くて怖くて
本当に
死んでしまいそうだった。
「フーちゃんっ!!!?」
「エリカ、袋、袋持ってきて早く、」
気付けは
呼吸のリズムがおかしくなっていた。
吸いたいときに吸えなくて
涙までじわりとにじんできた。
私は手を口元に当てて嗚咽をもらした。
目を閉じたら
またあの光景が頭をよぎりそうで
私は目を見開いたままなんとか呼吸を整えようとした。
「はい、袋!」
「高橋さん、ゆっくり深呼吸して」
マヒロくんに紙袋を差し出され
言われた通り、そのなかで深呼吸した。
マヒロくんが背中をさすってくれて
エリちゃんはおどおどと横で私を覗いていた。
吸って吐いて吸って吐いて
マヒロくんの言葉に合わせて深く深呼吸をすると、
だんだん呼吸は安定してきた。
「大丈夫?高橋さん」
「ヒクッ……う、ん、
平気、もう、…平気」
「よかったー、よかったよ〜っ」
初めて
過呼吸と言うものを味わった。