【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―



「もう本番近いし、難しくない?」


吉田さんが横から口を出して
ほんの少しほっとしてしまう。


やっぱり

頑張ったし、最後までやりきりたい気持ちが大きい。


「けど…麻美は本当にやりたいって思ってんだよ?練習もずっと一人でしてきて

高橋さんはやりたくないんでしょ?」



その疑問を私にぶつけてきて
黙りこむ。


どうすればいい?


私、ここで譲らないと意地悪みたいになるじゃん。


麻美ちゃん頑張って練習したって
私だって頑張ってきたよ。下手だけど。

二人の冷たい目線が私に突き刺さる。


嫌な雰囲気で文化祭なんてしたくない

それだけは避けたい


だったら


…仕方ないか。


「わかった、代わるよ」


「ほんと?ありがとー!」

二人はきゃーっと笑いあい手を叩きあって喜んだ。

この二人ならきっと

私の何倍もうまく演じてくれるはずだ。


私がここで意固地になって断るのは雰囲気を悪くするだけだ。



「いいの?高橋さん、一生懸命やってきたのに」


「いいよ、私だったら足引っ張るだけだし

…やりたく、なかったし、」



本当は

本当は



やりたかった。


演技なんて下手で足も引っ張るかもしれなかったけど

それでも

キノと同じ舞台にたってみたかった。


誉めてもらえるように

頑張りたかった。


キノごめんね


近くに居てやれないや。

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