【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「ええーーっ!!?なんで!?なんでフーちゃん衣装係なっちゃったの!?」
練習を終えるたあと
エリちゃんに役を降りたことを伝えるとエリちゃんは私の手を強く掴みながらそう叫んだ。
私は落ち着け落ち着けと呟きながらエリちゃんをなだめた。
「私下手だしさ、ちょうどよかったよ」
「フーちゃんは下手だけど下手なりに頑張ってきたじゃん!!
なのに途中から急にやりたいとかふざけてんの?バカじゃん
私が言ってきたげる」
「わ、え、ちょ、やめてやめて、
いいんだって、私も有り難いから!」
「けーどー!」
「ほら、エリちゃん学校ではそのキャラじゃないでしょ?
落ち着いてほら、笑って」
エリちゃんは、はっとして口を塞ぐとニコッと笑った。
うん、さすが演技がお上手で。
下手ってはっきり公言されたのはグサッときたが
本当のことなのでしょうがない。
エリちゃんぐらい上手ければ
反論の余地もあったろうに。
「だけど納得いかない
フーちゃん一生懸命頑張ってきたのに」
「一生懸命頑張ってきた結果があれじゃあなんも言えないよ」
エリちゃんは依然としてグチグチとしていたけれど
私がなだめて結局あきらめた。
私はエリちゃんが代わりにいらいらしてくれてスッキリした。
きっと
これで正解だったんだ。
私が降りたおかげで
練習も円滑に進んで
質も高くなる。
うむ、悔いはない。
と言いたいけど
やっぱりちょっと悔いは残る。
残りの期間
できる限りの手伝いをしよう。
私ができる精一杯をすればいい。
そんな決意をして
私は家に帰った。