【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
もうそろそろ一年になる。キノと付き合い初めてから。
去年もさっきみたいな雨の日に
キノは私に言ってくれた。
だけど
なんでOKしたんだっけ。
思い出せないんだけど
「んで、キノとはどこまで進んでんの」
「え?」
「キスした?エッチは?」
あら
紳士なマヒロくんがいきなりデリカシーないこと言い出しましたけど
……そうだ
よくよーく考えてみれば
私たちって
面白いくらい
なんもない
「いや、はは、まだ、なに、も」
「なにもってわけねーだろ。だってキノの家にも行ったんだろ?」
「いやー、行くけどそれは、ほんと遊ぶだけというか
ゲームしてマンガ読んだりしか」
「デートとかしてるじゃん。手は繋いだ?」
「どうだろ、手首は引っ張られた覚えあるけど」
「それ振り回されてるだけだよね」
「……まあね」
気になってなかったと言えば嘘になる。
キノのこともあまり知らなかったからどれが正解なんて分からないし、キノに合わせようと思っていたけど
薄々これはなんか違う気がすることは気づいていた。
世間一般では普通のデートはお互い私服でおしゃれして待ち合わせして映画とかテーマパークとか行くけど、
出掛けるなら帰り道今日みたいに買い食いするか
急に暇だからと家に呼び出されておしゃれしてったのに
キノは起きたときのままスウェット着てあくびしてたり。
そのあと何かあんのかと思ったら一日中ゲームしてお菓子食ってマンガ読んで
ただキノのいつもの生活に私が付き添っただけみたいなかんじになっていた。