【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
一瞬、ちゃんとキノの姿を見た。

無表情だったけど

大丈夫そうだった。


よかった。


会話ならいつでもできる。

私はここで影のように潜んでいよう。




「フーちゃんは行かなくていいの?」


「へ?あ、うん、またあとで」


「いやー、人気者ですなぁ。
羨ましいですなぁ。」


「うん、そうだね」



前なら

は?キノが?人気者?うーけーるー


で済ましていたかもしれない。


だいたいキノは人気者になれる要素をもとから兼ね備えてる。


顔はいいし

趣味は多いし

話せば面白いし

やらせたらなんでもうまくやるし


人見知りだけど


そんなの可愛いもんだ。



私がいなければ

キノは普通の人気者なんだ。



私がいたからみんな近寄りがたかったんだろうし


そりゃ何も知らないころは無愛想な虫好きの変人にしか思わなかったけど


キノを知れば

みんなキノを好きになってくれるんだ。


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