【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
結局
朝のうちに会話をすることは叶わなかった。
キノは"うん"とか"いや"とかで会話をしていた。
人見知りも固まらなくなっただけ成長したもんだ
いつのまに成長したの?
ああ
演劇練習か。
私は何かこの夏成長したかな。
そうだな
友達が一人できたな。
「フーちゃん、明日文化祭キノくんと廻るの?」
「わからない、けど、できたら」
「だよねぇ、私は誰とまわろっかなー」
「マヒロくんは?」
「ヒロちゃんはたぶんたくさんの女の子に拐われるから無理かな〜」
「エリちゃんも拐ったらいいんじゃないの」
「えー、いいよ私は
影で見守るから」
「けど、もうそんな遠慮しなくてもいいんじゃない?
だって、好きなんでしょ?」
そう訪ねると
エリちゃんは苦い顔をする。
「まあ、ね、振られた身ですから一応」
「え、あ、あー…、ご、ごめん」
そうでした!
こんな可愛いエリちゃんを振ったんだった。マヒロくんは。
けど、それはもう昔のことだし
もう無効になってると思っていいと思ってるのは私だけなのか。
「それに、なんか、ヒロちゃん好きな女の子いるっぽいし」
「え!?…そ、それはガチの、あの、ラブ?」
「そう、三年影武者していた私の目に狂いはないはず」
「だ、だ、誰…?」
「ふっふっふー」
エリちゃんは口角をあげてじーっと私を見つめる。