【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
ダメだな

ほんと



最近ため息が増えた。

幸せがどんどん逃げていってるのかもしれない。


それは、困るなぁ…



一度役者たちはいつもの空き教室に集まり打ち合わせをして

吉田さんが教室に戻って声をかけた。


本番通りの場所で一度練習をするらしい。


私も立ち上がってぞろぞろと行くクラスメイトに紛れて移動した。



いきなり衣装係になったからやることがわからなかったが、見てみると衣装作ってる子も限られていたから、恐らく私に出番はない。

本番は講堂の舞台で行われる。

講堂に向かって歩いていると



前方で背の低い子が花とリボンをたくさんあしらったドレスを床で引きずりながら一人で運ぶのを見て、私は急いで床を引きずっている裾の部分を持ち上げた。


驚いたように顔をあげる背の低い女の子。


衣装係の班長で裁縫が得意な子で竹内まこちゃん。

皆に"ちま"と呼ばれて可愛がられているけど

本人は背の低いのを気にしている。らしい。

あまり目立つ方ではないけれど
ショートカットが似合う可愛い子だ。



「ありがとう」


「いや、」



それだけの会話でまこちゃんはちょこちょこ小股で講堂に向かった。


私もペースを落としてドレスの裾を持って付いていく。


体育館にはぞくぞくとクラスメイトが集まり準備を始めていた。

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