【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「貸して、私が…」
そのときふと頭をよぎるったのは
キノのことだった。
キノは虫が大好きだ。
バッタを含めて。
私はキノの彼女として、そんなことをしていいのだろうか。
キノが、悲しむかもしれない。
前ならば
もし家に虫が現れたなら、どこまでもスプレーを持って追い詰め殺していただろう。
だけど今は
嫌いだけど
殺してはダメだ。
こいつらも外見はキモいが生きている。
家で子供が待ってるかもしれない。
痛みを感じることもできる。
私は完全にキノに感化された。
私は桶を手に持つと
バッタに被せた。
桶の中をバッタが跳び跳ねてカンカンいってる。
「お父さんが帰るのを待とう
で、外に出してもらおう。
跳ぶ系の虫は対抗出来ないよ」
「そうね」
お母さんと頷きあってお風呂場を大輝ちゃんと出た。
なんだかすごくいいことをした気分。
無駄な殺しを私は避けた。
うん、私、偉いぞ。
キノの彼女として、釣り合えるように
生き物を大事にしようと思った。
きっとキノの彼女ならそうあるべきだ。
いつかキノと虫取りとか行きたいな…
あ、想像するとめっちゃ笑える。
いい年して虫を追いかけるカップル。
まあそうなるには
私の努力が必要だ。
まだ触れないし
キモいって思ってるし
まあ
きっとそれは
ずっと未来の話だ。