【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
顔をあげてキノの顔を見て軽く笑った。
キノは
泣きそうな顔でうつむいた。
私、かっこよくない?
新しい素直な私、どうでしたかキノくん。
そんな顔しないで、笑顔を見せてよ。
「本当に…?」
「うん、本当に」
「信じていい?」
「当たり前」
キノは下唇をぐっと噛むとがばっと体重をかけるように倒れ込んできた。
勢いでそのまま倒れてしまう。
ただでさえ大きい子供なんだから…
屋上は、綺麗に掃除されていてよかった。
そんなことより
顔が近いんですけど
キノの目線が至近距離から私を見下ろしていて辛すぎて私は顔ごと目線から逃げる。
「ちょ、重いよ」
キノの肩に触れて押し返そうとしたが
びくともしなかった。
ねえねえ、と肩を叩くと
その手も掴まれ耳元で押さえられた。
キノの顔が青空を遮って私の顔に影を作っていた。
「ん、ごめん、ねえ、お願い
キスさせて」
「さ、さっきした」
「俺からもしたい」
「待って、」
「待てない」
待てない、の口の動きが妙にスローモーションに感じた。
人間には理性というものがあるけれど
小さい頃、明日の遠足が楽しみで"待てない"を連呼していたのを思い出した。
なんで今それを思い出したかは分からない。
いや、関係ないどうでもいいことを考えておかないと
恥ずかしさで頭が爆発しそうだったからだ。
キノにも理性ってもんがあるはずだけど
なんか、なんか、
切れた、らしい。
躾のきかなくなったキノが上から容赦なく唇を重ねた。
何度も何度も何度も
熱くて甘くて激しいキスを繰り返した。
ぎゅっと握りしめられた手を握りしめ返す。
言葉がなくても
この瞬間は
気持ちが流れ込んでくる。
目線から
手のひらから
唇から
私の気持ちも伝わっている?
キノへの気持ち
愛しくて
切なくて
大切で
幸せな
この気持ちが。