【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「あ、それと、こいつ」
キノは半開きのスポーツバックに両手を入れると
またそれを取り出して私に差し出した。
「こいつ、俺の家アパートじゃん、飼えなかった」
先ほどキノが雨のなか持ち帰った子猫が私を見上げていた。
「それ最初に気づかなかったの?」
「で、タカの家で飼えない?
餌代とか俺が出すから」
「…………えっ」
「いいだろ?なあ、こいつこんなに可愛いんだぜ?」
「いや、可愛いけども、そんないきなり無理だし
第一お母さんとか許してくれなさそうだし」
「あら、いいじゃない、子猫可愛い」
「だからだめっていって…………
!!?」
い、今お母さんの声が聞こえた気が…
「誰と喋ってるのかと思ったら、なに、あんた彼氏?!」
キノに向かっていつものテンションで話しかけるお母さんに対して
キノは子猫を手に持ったまま硬直してしまった。
キノの人見知りが発動した。