【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「タカー」
今日も教室の隣の机でだらりと項垂れているキノ。
席替えもあるというのになぜかいつも隣の席になるのが恒例というかなんかお決まりになってる。
キノは私より先にいつも学校にいるけどいつもこんな感じで机に突っ伏してる
「キノ、元気なの」
「元気?なにそれ、ちょーうける」
「ちょーうけるの?」
「へへ、タカだー、なあ、課題見して」
「私がやってると思ったの」
「まっさかあ」
「失礼だな」
変な乾いた笑い声を出しながらキノは私をちらりと見上げると左手に持ったシャーペンで私の膝頭をぶすぶすと攻撃し始めた。
なにやってんだこいつ。
「……キノは毎日退屈してるね」
「んー、まあねえ」
無視して今日の課題をしようとノートを広げると
膝頭に妙な感覚がじた。
「なっ、」
「かーけーた」
誇らしげにピースするキノを尻目に膝を見ると
いつのまにやらマジックで文字が書かれていた。
「油性で書いてみました」
「ちょ、消えないし、どーすんの」
「いーじゃん、1日それで過ごせば」
過ごせるわけないし
だって書かれている文字が"キノすき"なんだけど
なにこの自分大好き人間大阪湾に沈めたろか
大阪じゃないけど
「俺のこときらい?」
「きらいになりそう」
「えっ、うっそ、」
「私にも書かせてくれないとキノのことゴミクズだと思っちゃう」
「ご、ごめんてば、はい、なんでも書けよ」
キノにマジックを手渡され私はキノの腕を見た。
キノはズボン軽く捲ってるけど膝には書けないから
書くとしたらこの半袖で丸見えな腕だな
キノの腕に手を置いてマジックで文字を入れる
むむ、腹立つほど滑りがいいぞ
スルスルと文字を書いていくとキノの表情の変化に笑えた。
「…これはひでー…」
「うふ」
"ぼくはゴミクズ人間だ!イエーイイエーイ(^_^)"
顔文字とかいかしてると思うけど?
「ま、タカが1日それで過ごしてくれるんだからいっか」
にこっと微笑むキノに私も微笑みかえした。
そしてもともとずり下げていたニーハイを膝頭が隠れるとこまで引き上げた。
「…なんだと…」
「キノ、早く課題しよ」
「俺半袖だから隠せねんだけど…ひどいよタカ」
「そんなキノがすき」
「俺誰も信じられなくなりそう」
いやいや
ほんとだけど
バカなキノ
私けっこうすきだよ。