【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―

シンデレラ



「タカー、タカー、聞いてこの曲」


本格的な夏休みがついに明日に差し迫った変わらず暑い日。

学校に来るなりキノにイヤホンを差し出されぼんやりしたまま耳に入れた。


イヤホンからは数人の女の子がさわやかに歌い上げてるテンポのよい曲が流れてきた。


私はカバンを机の脇におろして音楽に耳を傾けた。



「俺初めてミカリン推しでもいいかもって思った」


誰ですか、それ


そういえばキノは軽いドルオタだった。

前はきょうちゃん推しとかでそれがなんかよくわかんないけどミカリン?推しに変わったらしい。

今期最大のどうでもいい話題だ。


音楽が嫌いなわけではないけど
趣味とかがあまりない私はキノの気持ちもよくわからない。


音痴って理由もあるけど。

私は自分で言うのもあれだけど

運動、歌、料理、の三大音痴を制覇してる女だ。


どうでもいいね。


「いい歌だね」


「だろ、タカも覚えて歌えよー」


「うん、いつかね」


いつかはきっと来ることはないでしょう。

キノは机にほっぺたをつけてだらけながら音楽を聴いてる。


私はイヤホンを机に置いてとりあえず一息ついた。

今日は予習なし


やることなし



さてどうしようかな。



「あ、高橋さん木野くんおはよう。
ちょっと劇のことなんだけど」


そう話しかけてきたのは実行委員の子だった。

キノはイヤホンをしたまま顔をあげた。


「二人だけ役職書いてないよね?
もう皆決まったんだけど、二人書いてないから強制的に役者してもらうからね」


「えっ!!?」



役者!?
て、いつの間にそんな事が進んでたの!?



「後ろの黒板に希望の役職のとこに名前書いてくださいって言ったよね?」



あ…

言ってた気がしてきた
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