【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「フユって、免疫ないでしょ」
「な、なに、」
「顔近づけただけで顔赤くなってる
脈あり?」
パクり
モグモグと口を動かすアザミくんに愕然とした。
食われたウインナー。
いやそんなことよりも
「つまり俺がキノよりはやくフユに好きって言っても
フユはたぶん
付き合うんでしょ」
言い返したいのに言葉が出てこない。
口が怒りであわあわと言葉を探しながら震えるけれど機能を果たさない。
考えたことがなかったわけじゃない。
確かにそうなのかもしれない。
キノにとって隣の席がたまたま私だったように
私にとっても隣の席はたまたまキノだった。
もしキノじゃない人だったら
私はその人とキノみたいに話すようになって
いつの日かその人に好きだと言われたなら
好きと思わなくても付き合うかもしれない。
キノじゃなくても
こんなこと考えたって意味がないと思うのに
どうしても考えてしまう。
キノはなんで私じゃなきゃダメなの
私は本当にキノじゃなきゃダメなの
ふと頭をよぎることは
そんなことだ。
全ては偶然の上に成り立っていた。
だから
好きの気持ちだけじゃどうしようもないこの気持ちは埋めることができない。
けど
それ全部考えたとして
一つ分かることがある。
「アザミくん、」
「ん?」