【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―

蔑むような冷淡な眼差しは、アザミくんに向けられていた。


キノだ。



私の知らないキノがそこにいた。


私は声を出せずにいた。


「キノ、焦ってんなよ」


笑いながら呟いたのは
アザミくんだった。



「お前、誰」


「相変わらず隠すのが上手いな」


「だから誰。誰でもいーや
なんか勝手なことばっか言ってくれてたけど」



キノが私の前に歩いてきた。
私は肩をあげたままキノを見上げた。

表情はさっきとはうって変わって微笑している。



「好きに、決まってるだろ」

頬に手を当てられ
スッと何の予告もなしに唇を重ねられた。

啄むように甘いキスを三回ほど

目元にキスを落とすと離れた。



私は遅れて顔が赤くなり始めた。


人前で

がっつりキスされた。


驚きすぎて声も出ない。

キノはまたアザミくんに向き合っていた。




「タカは、俺のだ」


「ああ、そう」


「タカに一回触るごとに三回死ね」


「ハイハイ」


やれやれといった感じで倒れた机を直してアザミくんはドカッと席に座った。



「ごめんな、フユ。
別にフユを責めたかったわけじゃねえんだ」


「あ、いや、…うん」


「用があるのは、お前だからな。キノ」



アザミくんの目はキノを見上げた。

キノはもうアザミくんの目を見ようともしなかった。
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