【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
その日の帰り道

色づいた木々を通して高い空を見上げながらため息。
赤とんぼが空を舞っているのに、キノは一言も言葉を発していない。

異常事態だ。



隣のキノをちらっと見てみると、目はどこを見てるのかわからないし
口は半開きだし

重苦しい雰囲気を背中に背負って歩いてる。



「キーノ」


声をかける。

反応はない。


つついてみる。

キノが足を止めて首を傾けて私を見下ろした。



「キノ、元気ない」


いつにもまして青白い頬に手を伸ばすと
ひんやりとした冷たさが伝わってきた。

柔らかい髪に何度か触れるとキノはうつむいた。



「タカは、……アザミのこと気に入ったの」


「アザミくん、あの人悪い人じゃない。
キノも話せばわかりあえるよ」



ね?と微笑みかけると

キノが顔を強ばらせた。
ちょっぴり不機嫌そうな顔で。



「…キノ、むってしてる」

「むー…」


「可愛いんだけど」


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