【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「帰ったー」


靴を脱ぎながらそう言うと台所から『おっかえりちゃ〜ん』なんて陽気な声が飛んでくる。

にゃあと茶の間からトコトコやってくる大輝ちゃんを抱き抱えて即行自室に逃げる。

お母さんに見つかったら面倒だし

邪魔されるし


キノは小さな声でお邪魔しますと言うと私の後ろをついてきた。


最近久々に部屋の片付けしたし

出迎える準備は万端。


「タカの部屋、久々」

「確かに」


そういえば
大輝ちゃん連れてきた日以来じゃない?

夏休み中も大輝ちゃん見にちょくちょく来ていたけど
部屋まで上がってこなかったし。



「あ、俺があげたやつ」


枕元に置いてある唯一のぬいぐるみ。

キノから記念日にもらったカエルのぬいぐるみだ。


「ちゃんと毎日抱き締めて寝てくれてる?」

「ううん」

「せっかくあげたのにー」

なんて

しっかり抱き締めてキノのこと考えてますよ。


大輝ちゃんをベッドに上げてカエルのぬいぐるみに手を伸ばす。

腕に抱えられるほどの大きさのカエル。

気に入ってるよ、とても。


「もうカエルに免疫ついたかなー」

「ぬいぐるみとリアルは次元違う」

「えー、そう?」


大輝ちゃんを抱き締めながらベッドにダイブされる。
ほんと躊躇いもくそもないんだから。

乙女のベッドに平気でダイブしますか

今自分を乙女と言ったことに軽く自分で引いてしまった。


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