【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「キノ…演技なんかできるの」
「さあ、やったことねーもん」
不安すぎる…
人見知りのキノが人前で演技なんて
しかも王子なんて
だめ…
キノ絶対できるわけない…
「よくわかんないけど、なんとかするって」
「そんな無責任に引き受けて大丈夫なの」
「んー、たぶん」
キノの言葉なんかあてにならない。
私だって人前で演技なんて恥ずかしくて嫌なのに
なんでキノは平気でいられるんだろ。
「それに、タカもやるんだろ。
タカが近くにいるなら平気」
「……そうなの?」
「さーあ、」
「私キノが心配」
「タカとならうまくやれるって」
「シンデレラは七瀬さんだよ、キノ」
「七瀬さん?て、だれだっけ」
「ほんとに覚えてないの?学年でも一位か二位くらいに可愛い子
ほら、窓際の前から二列目の」
キノが目を凝らして七瀬を確認しようとしている。
開いた窓から入る風にふんわりとなびく柔らかそうな髪。
細くて小柄な体
ぱっちりした目が特徴の可愛い女の子。
七瀬恵梨香ちゃん
あれで少しぐらいわがままだったらいいのに
繊細で優しくて
女子力高くて
もうなんなのって感じ。