【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「マヒロくん、ありがと」
ぼそっと呟く。
けど、マヒロくんの返事はなかった。
それどころか腕を離す様子がまるでない。
「ま、マヒロくん、もう大丈夫だから」
「あ…ああ、ごめん」
スルリと離れる腕。
それと同時に自動ドアが開くとアザミくんが入ってきた。
「…フユ、邪魔んなってる」
「え、あ、す、すみません!!」
混雑したレジの客がじろじろと私を見ていて、私は慌てて傘をとり店を出た。
マヒロくんも後ろからついてくる。
とんだ災難だった。
外はすでに雨が止んでいた。
「わりーな、あいつなんかつっかかってたろフユに」
「いや、全然平気、アザミくんここでバイトしてるんだ」
「ああ、俺独り暮らしだから」
「そうだったの、大変だ」
「そうでもねえよ、…あー、そいつは?」
アザミくんが私の隣を指差す。
おっと、すっかり紹介を忘れていた。
マヒロくんはクラス違うからアザミくんは知らないんだ。
「この人はキノの友達のマヒロくん」
「へー」
アザミくんがマヒロくんに目を向けると目を細めて頷いた。
「で、マヒロくんこちらは、」
「茅野アザミ、だろ?転校生の」
「そう、そう」
「ずいぶん仲がいいっぽいね」
「隣の席だから」
そういうとマヒロくんが納得したように頷いた。