【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「やっぱりいいや」
「え?」
「家で見るよ」
「見れないからこういう話になったんじゃなかったっけ?遠慮しなくていいよ」
「…遠慮じゃないよ」
遠慮じゃない
これは私の意思だ。
キノを傷つけたくない、私の意思だ。
そのためならたかが映画二本ぐらい…くぅ
「お困りだね、いい方法がありますよー」
いきなり
陽気な声が飛び込んできた。
振り返ろうとすると
肩に手がのった。
お馴染みの天使の笑顔が私の隣で炸裂して花が咲いてるみたいだった。
「エリちゃん!?」
「やあ!あまりにカオスというか見てられなかったから出てきちゃったよ!」
ぺろりんと舌を出すエリちゃん。
そんな見ていられない事態になってたっけ。
しかし
いい方法ってなんだろう。
エリちゃんは腰に手をあてがうとニコッと歯を見せて右手のブイサインをつきだした。
「私の家にはブドウもハーゲンダッツもある!!」
どやぁ
…
いやいや〜
と、私を含めエリちゃん以外の人が声に出した。
なんで!?と叫ぶエリちゃん。
たぶん大事な論点そこじゃないんだな。
けど、たぶん、いい方法には変わりない。
エリちゃんの家ならなんの気兼ねなく行ける。
「そうするよ、エリちゃん」
「ほんと!?じゃあじゃあ、二人も来なよ!映画は大人数の方がお得だよ〜」
マヒロくんとアザミくんは顔をあわせて苦い顔をした。
けど二人とも最後には頷いて、結局、4人でエリちゃんの家で借りてきた映画を観ることになった。