【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「なにしてんの」
トイレの手前の階段でうずくまっていたアザミくんがばっと顔をあげた。
慌てたように顔をそむけて階段の上の方に目をやったり
何か不自然だ。
何より気になったのは
アザミくんの頬が
微かに涙で濡れていた気がしたことだ。
階段の上を向きながら目を服の袖で擦るとこちらに向き直る。
目が赤い。
「なに、映画終わった?」
「うん。アザミくん途中で消えたから、面白くなかった?」
「いや、そういうわけじゃなくて」
「なんで泣いてたの」
その疑問をぶつけるとアザミくんは一瞬だけためらった。
「……眠たくなって、あの映画見たことあるしさ」
「なにかあったの?どうして泣いてたの?あの、大丈夫?」
「ぷ、心配しすぎだって、普通にあの話悲しいから、思い出したら泣けてきただけ」
確かにあれは泣ける作品だったけど。
えっ、てことは何。
アザミくんは涙を隠すためにここに居たってこと?
何それ。まじか。