【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
ふと思ったが、このメンバー、新鮮だ。

アザミくんがいるからだろうか。


キノは今どうしてるだろうか。


ヒュッと通りすぎる風に身震いをした。



「じゃあな、フユ、俺あっちだから。
いつか遊びにこいよ」


「うん、キノと行く」


「キノはいらないなぁ」



アザミくんは笑いながら私に背を向けると手を振った。


私も帰路につく。


レンタルビデオ店からここまで来たが、ここからもとの道を辿って帰るのは少し遠い。


そのときすぐ思い付く近道が一つ。

思い付いたあとでそれと一緒に脳裏に浮かぶ光景に私は顔を苦くした。


商店街を通れば近道になる。いや、普通ならそこを通って帰るべきなのだが。


商店街に行くには通らないといけない場所があった。

それが私の足を留めさせる。


コンクリートにフラフラと揺らぐ影

水面に映る無数の星たち

それらを吹き飛ばすように上がる飛沫



きっと

あの橋を通ったらまた思い出す。



あの日からずっとあの橋を避けていた。

もともと家から学校までの道に橋はなかったのだけど、キノの家に行くにしろ商店街に行くにしても橋を通るのが断然早い。



あれから日にちが経って

普通の日常に戻って、染みみたいに残った記憶もだんだんと消えて

それでも完全には消えないで今でも残ってる。


だけど


私もいい加減前に進もう。


逃げるのはもうやめる。

ちゃんとキノと向き合う。


そう決めたはずだ。



「よし」

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