【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
やっと気持ちが定まったのに
前に進もうって思えたのに
なんで、
ポツリポツリとまとまらない気持ちが頭の中で浮かんで消えない。
キノじゃないかもしれない
は、たぶんいきなりのことで動揺してそう思うのが怖かったんだ。
目の前の出来事があの日と同じで
私は信じたくなかった。
あの日と同じように頭の中で嘘だを連呼して、
へたりこんで…
…違う、でしょ。
私は、もう、あのときと違う。
このまま突っ立ってへたりこんでいたら前と同じだ。
キノを失うかもしれないというあの日と同じ恐怖を味わいたくないなら
いい加減
キノを絶対に守るって決めろバカ
弱いままの私じゃこれからキノのこと受け入れるキャパがオーバーするよきっと。
今キノを守れるのは
私しか居ないんだから。
足に力を入れて、私は手すりに手をかけた。
鉄棒の要領で体を押し上げてなんとか片足を橋にかけて、あとは、無理矢理体を川がわに傾けた。
ゆらりと揺らいだ影が私のものだと気づいたとき
体が宙に浮く感覚を初めて味わった。
恐ろしいほど寒くて
恐ろしいほど綺麗な夕焼けが目に焼き付いた。