【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―


『キノっ』


そう叫んだ直後全身が凍るような冷たい水に叩き込まれた。

ごぼごぼと泡が体を包んだあとなかなか上がらない体は流されていることに気づいて急いで腕をばたばた動かした。


そのときようやくはっとした。





泳げないん、でした。


運動音痴の中にはかなづちが含まれてることを忘れていた。

かなづちが流れのある、しかもいつもより水かさの増した川に飛び込むとどうなるか。

常人でさえ危ないのにかなづちならばその先は目に見えるはずなのに…


足がつかない。

秋の川


冷たすぎて死ぬ


しかも、川の流れ思ったより強い

朝に小雨降ってたからだ。



え、

私、死ぬの



落ちる前にためといた息が一気に漏れて、泡になった。

思うように体が動かない

私、何のために落ちたんだっけ。


そうだ、キノを助けるためだ。


なのに私

なにやってんだろ。


キノを追いかけて飛び込んで助けるはずがその前に死にそうになって


体力も気力も尽きた。


もう自分が生きてるのか死んでるのかもわからない。

私は何にも出来ないのか


このまま、死んでしまうのだろうか。


まじか…


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