【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
なんだかふと気持ちが軽くなった。

キノのこと別に気にしない気にしないっていつも思ってるけど

私、案外気にしてる。


やっぱりキノは女子から見ればカッコいいって思われてるわけで

キノに自覚あるかなんて知らないけど


キノが私以上にいい人見つけたら一瞬で乗り換えられそうだ。



だいたい付き合いだしたきっかけも

なにか特別な、お互いを意識しはじめることがあったわけじゃなくて

いきなりだった。



確か、

去年から同じクラスの隣の席で
どうしても話さなきゃならないときにちょびっと会話はしたけど


趣味も合わないし

優しくしてあげたわけでもない


初めは目も合わせず
話しかけても無視されることの方多くて

夏が近づいてある朝カブトムシと机の上で遊んでたり
カマキリと遊んでたこともあった。


そんなことを毎朝隣の席で見てりゃ気にならないわけもなく


あまりクラスに馴染まない彼が少し気になって


一人で何かやってる姿が

可愛いなって思って


そのときにはもう
キノ以外見えなくて



少しはまともに話せる仲になったあと

真夏に大雨が降った。


迎えも来なくて雨が止むのを待つために誰も居ない教室に戻ったら

キノが一人

いつものように机に突っ伏していた。


なんでもない話をしながら雨を止むのを待っていた。

なんでもない話をしていて
わけのわからないタイミングで

キノはいきなり突拍子のないことを口走った。


"俺、タカが好き"


雨音の中で
確かにキノがそう口にしたのを今でも鮮明に覚えている。


それが始まりだったわけだけど


私はそれまでキノをそんな風に意識したことなんて一度もなかったはずだ。

気にはなっていたけど


好きだと思ったこともそれまでなかった。


だけど

そのときキノが


すごく愛しく感じられたのを覚えてる。



清々しいほど自由なキノに

きっと自然と惹かれていたんだろう。
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