【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
例えキノが
澄んだ高い秋空
紅く色づいた山々
そのなかを駆け抜けるバス。
山道はガタガタしてあまり好きじゃない。
乗り物酔いもするし、高いところは耳が詰まる。
それにも関わらずこのバス内は騒がしい。
「夕焼けー小焼けのーあかとーんーぼー」
「りりり、リサイクル!」
「え!山中くんとみさっち付き合ってんの?」
あっちでは合唱そっちではしりとりどこからともなく聞こえる噂話。
キャンプ当日だ。
あまり調子は良くないが、休んではもとも子もないので取り敢えずバスに乗ったものの
たまに風邪の予兆が見える。
「グシュンッ」
ズズッと鼻をすすりながら隣に目を向けた。
私の隣は異様に静かだ。
山に入ってから窓の外の木々をずっとじーっと眺めるキノ…
あまりに真剣で、こちらはこちらで気分も悪いから特に声をかけないが
少し窓を開けてもらおうとキノの肩を叩く。
しかしながら微動だにしないキノ。
足を踏みつけたところでようやく気づいてもらった。
「タカ、カモシカに会える、かも、かも、カモシカ」
「…ああ…キノ、窓開けて」
「おう」
キノがちょっと変なのは置いといて。