【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―

「ちょ、木野くん、列を乱さないで」


「けど、あっちにカモシカ居そう…」


「居ない、列を乱さないで」



後ろの方でそんな会話がさっきから数回聞こえてる。
よく考えれば山なんてキノにとっては天国みたいなもんだもんな。

あちこちに虫が居るわけだし、
うろつきたい気持ちでいっぱいなんだろう。


吉田さんのおかげでそうはいかないみたいだけど。

キノが吉田さんの班でよかったかも。


「あっ、紗和ちー、へびっへびっ」


「へびっっ!!!?」


「ほら、」


「ちょっとやだ、まこ押さないで、あ、こら!!木野くん腕に巻かないで!毒あったらどうすんの!!?」


「これは毒ない」


「そういう問題じゃ、ぎゃぁあっっこっち向けないで!!!」



…キノと同じ班じゃなくてよかった。

吉田さんへび嫌いなんだ。
叫ぶ吉田さんに笑うまこちゃんそしてへびを手なづけながらきょとんとしてるキノ。


おもしろいっちゃおもしろい。


「木野くん紗和ちーはねぇ、へび大好きなんだよ」


「ほんと?触る?」


「バカバカっ、ちまって呼ぶわよ、ちびのまこのちまっ!!」


「ちまってゆーな!!紗和ちーのことザワザワって呼ぶよ!!」


「なによザワザワって!?」


「紗和ちーザワザワしてるから!」


「わけわかんない!」


「へび好きなの?」


「木野くんは早くそれ離して!」




笑いを堪えながら肩を震わせる。

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