【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
すると麻美ちゃんが手をあげながらこう言った。
「恋ばなしよーよぉ!」
「あ、いいね」
エリちゃんもつぶやいた。
友紀子ちゃんもいえーいと声を出す。
私はと言うと
恋ばなという女子っぽい響きにどきどきしていた。
すごい、なんか、すごく女子っぽい、恋ばな!
「じゃあ、まずはぁ、友紀子からねぇ!」
えー!と、ツインテールを揺らしながら友紀子ちゃんがはにかんだ。
「例の先輩は?どうなの?」
エリちゃんが咄嗟に問いかける。
「どうって…まだラインでしか話してないし…、」
「どんな会話してんの?」
「えぇ…、部活お疲れさまとか試験お疲れさまとか試合お疲れさまとか」
「お疲れさまばっか!!」
あははと笑いながら麻美ちゃんが言う。
私は黙ったまま真剣に友紀子ちゃん話を聞いていた。
なんだか不思議だ。
いつもおなじ教室にいるクラスメートの恋の話なんて。
友紀子ちゃん先輩が好きなんだ。
先輩って学年違うし、どうやってラインまで行き着いたんだろう。
すごいなぁ。
「けどねぇ、みてみて、ほら、この前のラインのおやすみのあとのハートマーク!ハート!」
「ほんとだ、結構いい感じなんじゃない?」
「だといいなぁ」
「いつ告るの?」
「やっぱり今受験とか忙しいじゃん?だから、卒業式とかかなぁ…」
「ええ?!取られちゃうよぉ!!あの人人気なんだから!」
「けど、この前ラインで彼女作らないんですか?って聞いたら受験勉強でそれどころじゃないって…」
「そっかぁ、じゃあ仕方ないね」
受験か。
今の三年生はそんな時期なんだ。
来年は私たちが…
ううん。想像できない。