【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「麻美こそ、好きな人できたの?」
友紀子ちゃんが麻美ちゃんに笑いながら言うと
麻美ちゃんは、えっとねーとボブの髪をいじりながら照れ臭そうに口を開いた。
「アザミくんかっこよくない?」
「あー!転校生!?」
ちょっとちょっとちょっと
アザミくんて、あのアザミくん?だよね。
やっぱり人気なんだ。
「ちょっと不良っぽいとこよくない?」
「ああ、確かに、見た目ねぇ。髪黒いのに言動が不良のそれなんだよね」
不良っぽいってのは確かにそうかもしれない。
前は金髪で完全に不良に見えたし。
椅子の座りかたもだらしないし、なんていうか、不良っぽいんだ。
「そうだ、高橋さん隣の席だよね?どう思う?」
「え?」
どう思うって、アザミくんのこと、だよね。
うーんと今までのアザミくんの記憶を思い返してみる。
「彼女いないって言ってた。なんか、えっと、あれは、王様みたいな感じで」
「彼女いないんだ!よかったじゃん」
「王様みたいってやばい〜、束縛されてみたいっ」
そ、束縛…
そうか女の子は束縛されたいものなのか。
私も確かにもう少しキノに束縛されてみたいかも。
束縛って
…あれ?どんな?
「束縛ってどんな感じ?エリちゃん」
「え?んとね、そうだな、例えばねぇ」
そう言うと、エリちゃんは麻美ちゃんの携帯を勝手にリュック脇のポケットから取り上げるとそれを見ながら演技し始めた。