【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
とりあえず一階に降りてソファーに座ってニュースをぼんやりと眺める。
『今日はおいしい焼きいもの焼き方を教えてもらいまーす』
『わあ!すごい湯気です!』
普段なら1秒足らずで変えるであろうくそつまんない番組の端から端まで見つめるけれど実際の中身はさっぱり入ってきていない。
数分後にお母さんが行ってきまーすと言いながら仕事に出かけていった。
ニュースの声だけが流れる部屋は寂しげで、少し寒い。
やることもないし、漫画でも読もうかな。
なんて。
テレビを消して再び部屋に戻ったけれど何の気力もなく、結局ベッドへ。
そういえば、熱どれぐらいあるかな。
体温計を探してきて計ってみる。
37度3分
オカシイナ。こんなにダルいのにな。
もう学校は始まってる。
キノ、どうしてるかな。
キノは寂しがり屋だから。
一人で大丈夫だろうか。
天井の一点を見つめれば、キノの顔が浮かんでくるような気がした。
キノも、悩んでるだろうか。
私みたいに。
いつか私とキノは終わるのかな。
キノが離れていってしまう日が来るのだろうか。
怖いな。
キノの想いをちゃんと知りたい。
彼の悩みを聞いてあげたい。だけど、踏み出せない。
聞いたら終わるって思ってるのに変に聞くことなんて出来なかった。
けど、そこから何か始まる可能性だってある。
関係を改められるかもしれない。
だけど今は、
知るのが怖い方が勝る。
小さく丸くなってこのまま時間が止まればいい。
だけどキノに会えないのはやっぱり寂しい。
なんでこんなに上手くいかないんだろう。
なんで苦しまなきゃいけないんだろう。
キノの側にいたいだけなのに
たくさんのことが、それを妨げるように私の心を歪めていく。
だけど
キノはもっと
苦しいのだろう。
私ばかり悲劇のヒロインぶってたら、変だよな。