【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―


そのとき急に、携帯が震え出した。

枕元の携帯を手に取り画面を見ると、エリちゃんからラインが来ていた。

【熱大丈夫??ゆっくり休んでね!アザミくんもお大事にだって!】

ありがとう、のスタンプだけ押して枕の下に頭を埋める。

キノは

…心配してくれないの?


…そんなわがまま思わないけれど


キノがなに考えてるのかいつも分からないから。

そんな自由なキノが好きだったんだけど。


それは

今思えば私と真逆な彼だったからかもしれない。


生き物が好きで

外で遊ぶのが好きで

私以外に好きな人がいて

いつも思ったように動いてくれない。



だけどたまに

すごく嬉しいことをしてくれる。



キノにとっての私ってなんだろう。


タカラの代わり以外に

私に意味はあるのかな。


私は、代わり以外の何者でもないのかな。



それを考え始めると、ズキズキと胸が痛む。

携帯を握りしめながら、じっとしていると


携帯がまた震えた。


エリちゃんからの返事かなとおもいながら枕の下から画面を覗くと

ラインじゃなくてメールだったことに気づいた。


メール、メールを送るやつなんて


一人しかいない。


それは予想どおりの人物で、私は口元が緩むのを下唇をかんで我慢した。


画面の文字を三回ほど目で追う。


【大丈夫?】




なんて短いメールだろう。
そして、よくこんな短いメールで私を喜ばせる。

この高揚感、胸が膨らんで、喉から出てこれない声、
苦しくて、嬉しい。



たぶん、これは末期の症状だ。




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