【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「てことだから、先帰っていいよ」
「やだ」
「…別に待ってていいけど、邪魔しないでね?」
「うん」
するとキノは隣のアザミくんの席についてじっとこちらを見つめてくる。
…これはこれでやりずらいんだけど。
「そうだ、キノが教えてよ。得意でしょ?生物」
「え?俺が?」
「うん。何もしないのも暇でしょ」
「うん、俺教えれるかな」
「とりあえず近く来なよ」
キノはアザミくんの席を立ち上がると今度は前のエリちゃんの席に座っていすごとこちらを向いた。
ずいっと顔を寄せるキノに一瞬だけドキリとして、答案に目を落とした。
「えと、まずはここから」
「これはー」
ペラペラと聞いたこともない言語を並べ出すキノに早くも頭が爆発しそうになったのは言うまでもなく。
「と、とりあえず教科書見てみよう」
と誤魔化してみた。
生物の教科書は少し苦手だ。
カエルの写真がのってるからページ捲るとき無意識でいると驚いてしまう。
キノが教科書をじっと見ているうちに、なんとか解答を見ながら頭に詰め込んでいく。
だいたい追試明日なのに1からやっていたらキリがない。
最初から気づくべきだった。
それから1時間
なんとかいけそうなレベルまで頭にいれた。
背中をぐっと伸ばしながら顔をあげてみると
キノが寝息をたててうつむいていた。
ほっとくとすぐ寝るんだから。
邪魔するなって言ったのは私だけど。
ちゃんと大人しくしてくれたんだね。
身をのりだしてキノの頭に手を伸ばし、柔らかい髪を優しく撫でると
キノがゆっくりと顔をあげた。
ぼーっとしてるキノがかわいくて、何度か撫でると
キノが覗きこむように
触れるだけのキスをした。
撫でる手が止まって顔に熱が集まっていくのがわかった。
キノそのあと頬にもキスをしていったあと小さな声で帰ろっか、と呟いた。
私は操られたみたいに頷くしか出来なかった。