【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
そうしてやっと中に足を入れた。
女性が出してくれたスリッパを履いて、居間に入った。
少し、雰囲気が変わったみたいだ。
なんだか、きれいになって、女性的な部屋になっている気がした。
「冬ちゃん、と、お友達さん、オレンジジュースでいい?」
「ありがとうございます」
「エリカでーす、大丈夫です」
机を囲んで私とエリちゃんは並んで腰を下ろして、真さんは向かい側に座った。
やがてオレンジジュースを差し出され、女性は奥の部屋に入っていった。
そこはキノの部屋だった。
「さて、何から話そうかな」
「あの、あの人は、」
一番気になっていたことを聞くと、真さんは明らかに照れた顔をして先ほど入っていった部屋にちらりと目を向けた。
「あれね、俺の奥さん」
「え、結婚してたんですか」
「いや。したばっかり。一週間前だよ」
「わー、いいですね新婚さん!」
エリちゃんはオレンジジュースを飲みながらのんきに笑った。
そして平然と質問をした。
「真さんて、誰ですか?」
「ええ?冬ちゃん、言ってないの?」
「すみません。一人で来たつもりだったので、」
着いてからその存在に気づいたんだから、仕方がない。
しかし、そういえばエリちゃんにはそういう話は全然していなかった。
「隆也のおじさんです」
「あっ、なるほどー!ちょっと似てますね!」
「そう?」
真さんは困ったように笑うと私に顔を向けた。
「冬ちゃん、何が聞きたい?」
「……えと」
聞きたいことならたくさんある。
だけど、今一番聞きたいのは、やっぱり。
膝の上に置いた手を握りしめて、私は身を乗り出した。
「キノは、今どこに?」