【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―

なんか、予想外の話を聞いたのに、タカラさんの話をほとんど聞けないなんて少し、変な気もした。


けど、そうか。

キノが真さんと暮らし始めたのが中2に入ってからで、道宮宝との関わりがあったのはその前…


養護施設にいた、たった一年間の間ってことか。


キノにとっては、恐らくその一年が何か意味を持っていたんだろう。


道宮宝が

キノにとってかけがえのない存在だったんだろう。


いったい、どんな人が…


あれこれ考えを巡らせていると、
エリちゃんが隣から抱きついてきて、危うく倒れそうになった。



「エリちゃん…?」


「うぅう"…こんな悲しい話…うぅう"う"」


「来なくてよかったのに…」


「やだよ!フーちゃんに置いてかれるのもう嫌だもん…私力になりたいって言ったじゃん」



そんな泣きながら言われても。

だけど、一人だったらこんな冷静になれなかったかもしれない。

私のぶんも、エリちゃんが泣いてくれたから。




「ありがとうね。エリちゃん」


「ふ、フーち"ゃあああんっ」



ガシッと抱き合って、私はエリちゃんの背中をさすってあげた。


エリちゃんはなんだかんだ言って、いっつも心配してくれていたね。

感謝してるよ。本当に。

私の大切な友達だ。




それから真さんにキノの今の環境について少し聞いてから礼を言って、アパートをあとにした。





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