【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
ここにいよう
私はたぶん依存していた。
このなんとも言いがたいぽっかりあいた大きな穴は、その証拠。
キノが居なくなった。
私を置いて、行ってしまった。
違う。私は何もしなかった。
だから、キノが私を置いてったなんて、ただの被害妄想でしかないんだ。
キノは自分の意思で行った。
そこに私を置いていくことへの未練なんてなかったはずだ。
だけど、それを思うと私は悲しくて虚しくてしかたなくなるんだ。
キノのお母さんのこと、真さんの結婚、色んなことが関わってることを私は知っている。
その中に他人の私が入り込んでいくのも無理な話だった。
私ではダメだとわかっているから。
もう、私には何もできない。
近くにいる権利も機械も関係も何もない。
キノと私の間には越えられない大きな大きな溝があって、私はそれを越えてはいけないのだ。
いや、越えられないのだ。
キノの空席はいつの間にか消えて、謎の空白だけが残っている。
まるで最初から誰も居なかったかのように、そこを歩く生徒もいる。
ふとした瞬間に、まだ、あの背中が見える気がして、私は目を移すけれどどうしたってその空白は空白でしかなかった。
そうやって寒い冬が過ぎていった。