【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
マヒロくんが私の目をじっと見つめたあと、ガバッと抱きつかれた。
一瞬驚いたけど、私は、されるがままにしておいた。
「高橋さんて、思ったよりバカだ」
「うん、知ってる。」
「なにそれ、俺、全然勝ち目ねーじゃん、ひどすぎるわマジで」
抱きつかれていて、マヒロくんの表情はわからなかったけれど、掠れた笑い声からは少しくぐもった嗚咽が交じっていた。
「マヒロくんなら、私なんかよりずっといい人いるから心配しなくていいよ」
「そうそういないよ。高橋さんみたいないい女は」
「あはは、逆だよ、こんなバカな女はそうそういないよ」
「高橋さんならきっと大丈夫だよ。俺が保証したげる。なんたって俺が好きになった女の子なんだから。」
イケメンのお墨付きをいただいた私は、
笑いながら涙をこぼした。
今まで踏み出すことに焦りすぎていた気がする。
忘れないと、とか、そうじゃないと惨めだ、とか、
その感情を全部大切にしよう。
そして長い時間をかけて解消していこう。
私は、そんな簡単に
キノを忘れられないから。
「マヒロくん、戻ろう、エリちゃんが待ってる」
「そうだな」
「あと、アザミくんはたまたま会っただけだから、じゃあ一緒に行こうってなった」
「なるほどね」
マヒロくんの隣を歩きながら、私たちは元の場所に戻っていった。
元の場所で、エリちゃんとアザミくんは二人してリンゴ飴を舐めていた。
「おせーなー、もー、フユを拉致ってどうするつもりだよ」
「うるさい、お前はなんか、前から気にくわなかったんだ。キノと知り合いなんて知らなかったし」
「あ、フユ言ったの?」
「ダメだった?」
「いんや?別に」
エリちゃんは口一杯にリンゴを頬張ってもぐもぐと口を動かして、ごくんと飲み込むとニコッと笑った。
「みんなでおみくじしよー!」
私とマヒロくんとアザミくんで目を合わせあって、私たちは頷いた。
「うっし、行こーぜー」
「お前はお先真っ暗だろうから見ない方がいいかもしれないぞ」
「は!?んなことないわ」
「大吉だといいね!」
「そうだね」
澄みきった青空。
ちなみにこのあと、私一人だけ大吉を引いた。
そのなかに書いてあった、待ち人、来るでしょう、の文字に反応したのはまだまだ振り回されている証拠。
今年も、
みんな元気で過ごせますように。
キノが
元気でありますように。