【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
チラリと彼女の顔を見ると、
特にバカにするでもなく、少しだけ微笑んでいた。
逆にこっちが怖くなった。
「あ、ちょっとまって、なんで死ぬの?」
「関係ないだろ」
「私の大切な場所使わせてもらうのにそんな言い方するの?」
「………嫌なことあったから」
「どんな?」
ずけずけと踏み込んでくる彼女に、ついに嫌気がさした。
最初に顔を見たときから気にくわなかった。綺麗な顔して、人の気持ちなんて知ったこっちゃない。
ハキハキとしゃべって
コロコロと表情をかえる。
きっと誰にでも好かれるタイプ。
俺は、そのタイプが一番嫌いだ。
「どうでもいいだろ!!今日は帰れってばっ」
「やだよ、なにきれてんの」
「~…っ」
「言いたいことあるなら言えば」
うるさいうるさいうるさい
言いたいことなんてあるもんか
部外者のお前に何がわかる。
俺のことは俺しか理解できやしない。
お前なんかに
わかりゃしない。
「俺は、…いらないんだよ、母さんは俺なんか生まなきゃよかったって言った、
だから、俺は、死ぬんだよ。
お前にはわかんねーだろうけどな、俺がいなくなったら母さんが幸せになれるんだ」
言いきって、俺は川の底を見つめた。
母さんだけが、俺の存在を必要としてくれていた。
だけど、その母さんが、もう俺を邪魔に思っている。
俺は、もう、いなくなるしか母さんのためにできることはないんだ。
日が暮れそうだ。
静かな川の流れる音は、心拍数をあげた。
「ねえ、名前は?」
「………木野隆也だけど」
「そう、じゃあ、キノね。」
「隆也なんだけど」
「キノのほうがいい感じ」
ニコッと微笑む彼女から、慌てて目線をそらす。
こんなことやってたらいつまでたってもおちれない。
いい加減、覚悟を決めないと。