【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
お互い水浸しで、タオルを貸そうと家に寄らせようとしたら、断られてタカは俺の前からいなくなった。
大きく手を振りながら、あっけなく、帰っていく姿を見ながら俺は憔悴していた。
帰ったあとも、タカの姿が思い浮かぶ。
なんだろう、この気持ちは。
焼き付いて離れない、あの夕焼けの中に、髪を揺らめかせながら凛と立つ姿が。
鼓動が早くなる。
胸が熱くなる。
この感情は
なんて言うのだろう。
その日は早く寝た。
次に彼女と会うことはあるのだろうか。
そんなことを何度も思い返して過ごした。
再開することへの希望が、今の俺を生かしていたと言っても、過言ではなかった。
タカとの出会いはそれほど衝撃的だった。
母さん以外の全てのものを拒みながら生きてきた。
だけど、
彼女はこんなにもあっさり俺の心に踏み込んできた。
そして、その存在を大きく刻み付けた。
いったい、どこから来たのだろうか。
彼女は何者なのか。
タカという名前以外、何も分からない。
こんなことなら、どこに住んでいるのかぐらい知っておけばよかった。
そう思っていた矢先、
俺らは思ってもみない場所で再会したのだった。