【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―


踏む度にきしむ床が、なんとなくもとの家とリンクしてどことなく自然で居られる場所だと思った。

外から見るより、中は結構広くて、畳の部屋が見ただけでも一階に4つはあった。


その中の一つに招かれ、座布団の上に腰を下ろすと

即座にお茶と茶菓子を差し出され軽く頭を下げた。


にこにこと微笑む年配の女性は、その表情からもうかがえる通りとにかく優しそうだ。



「ここまで来るの大変だったでしょう」

「ええ、まあ。普通です。」

「いきなり驚かせてごめんね。
さっきお昼ご飯食べたばかりで皆遊びに行っちゃったのよ。ここはほとんどが小学生と幼稚園の身寄りのない子や親の仕事で世話が出来ない子が一時的に預けられたりするの。」

「はい」

「貴方は一年間ここで預けられることになってるから、それまで私たちがサポートするからね。私はこの児童養護施設を作った田辺です。よろしくね」


田辺さんは丁寧にここでの生活のことや、これからの学校のことを教えてくれた。

俺はそれを聞きながら、心のなかではタカのことでいっぱいだった。

どうしてもあの反応に違和感を感じてならなかった。



「それと、ここに暮らしてる子で、隆也くんと同い年の今度から隆也くんが行くことになる学校と同じ学校の子がいてね、面倒見がいい子だから、何かあったらあの子に聞いてね。名前は道宮宝というのよ」

「…宝?」

「さっき見たと思うよ。ちっちゃい子たち引き連れて外に出ていった子」

「タカって言われてた子ですか?」

「うん、そうそう。その子のこと、タカって呼んでくれると嬉しがると思う。逆に宝って呼ばれるのを嫌がるみたいだから」

「それは、どうして」

「それは本人に聞いてみなさいね。じゃあ部屋を案内するからね」

「あ、もう一つ質問いいですか?」




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