【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
ガチャッと音を立てて開いたその先に、
確かに彼女はいた。
着替え中だった。
これは、まずいのだろうか。
だいたい女の人の着替えなら母さんので見慣れているし、だいたいまだタカも子供だし、見られて恥ずかしいとかいう年齢でもないだろうし
胸も年齢相応にぺたんこだし。
うん、気にしなくてよさそうだ。
中に足を踏み入れた。
その途端、
殴られた。
そして外に投げ出された。
二回目の顔合わせは一回目よりも短い間に幕をおろした。
午後6時、夜ご飯の時間だ。
子供達がキャーキャー騒ぎながら大きな長机を囲んで配膳された夕飯を口にかきこんでいく。
俺の正面にはタカが座っていた。
ムスッとした顔。
怒ってる…んだろうな。
どうやら俺の判断は間違いだったらしい。
中学生は子供でも大人でもありませんでした。
けど、胸なかったし。
「あら、隆也くん?左の頬が赤いわよ?どこかにぶつけた?」
「…いや、…蚊に刺された…かな」
「あらら、お薬ぬる?」
「いいです」
余計しみそう。
夕飯を食べ終わると、また各々の部屋に戻っていった。
もう、あとには引けない。
一度したんだからもう怖いものなんかあるものか。
入ったときに着替えてなければいいんだ。
それなら、タカが部屋に入ってすぐに行けばいいだけの話。
なら、それは、今だ。
タカが部屋にはいるや否や、俺もそれに続いてドアを開けて入った。
「話したいんだけど」
「わっ!?な、ちょ、ちょっと!!」
「ここ座っていい?」
「ノックをしなさいノックを!!バカじゃないの!?」
「あ、そうか。じゃあ次からはするから」
明らかに嫌そうな顔で言われたけど。
地味に傷つく。
半ば強引に部屋に入って座布団の上に座っていると、タカは立ったまま落ち着かない様子で机の上を整理し始めた。
今することないのに。
「タカ」
「な、なに」
「なんでさっき…ここにきたとき、俺のこと避けたの?」
「……知らないし、なに?勘違いでしょ。私たち初対面だし~…」
「なにとぼけてんの。忘れるわけないだろ。自殺止められて川に飛び込んだやつの顔」
「………」
「で、なんで避けたの」
タカは罰の悪そうな表情で俺を見たあと、また目をそらしてうつむいた。
言いたくなさそうなのは伝わってきた。
別に追い詰めたい訳じゃないからそこまで肩を落とされるとこっちとしてもやりにくい。
「……幻滅しなかった?」
「…なにが?」
「わ、私が、……暮らしてること…」
幻滅では、ないだろう。たぶん。
確かに驚いたことは驚いた。それはただ引っ越し先にタカが居るとは思わなかっただけで、別にがっかりなんかしてないし、むしろ嬉しかった。
タカは、ここに居ることをうしろめたかったということか。
…よく考えてみれば、ここに居る子たちは、訳ありな子も多いだろう。
事実、俺みたいなのがここにいるわけだし。
タカも、例外ではないということなのか。