【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「じゃあ!今度はなにして遊ぼーか」
さんざんカエル遊びをしたあげく、まだ別のことをするようで、まあ、もうここまで来たらとことんタカに付き合ってやろうという勢いでは居るんだけど。
タカは傘をくるくる回しながら、急に何かひらめいたように目を見開いた。
「えー、記念すべき第…何回か忘れたけど宝探しーーー!!」
「なに探すの」
「だから、宝!」
「……タカのこと?」
「まあ、そうとも言う」
「かくれんぼ?」
「ううん、宝探し」
「宝を探すから?」
「ううん、タカを見つけてね」
えーと、うーんと、つまり、
タカは自分の名前が好きじゃないってことは聞いたから知ってるけど、このかくれんぼに関しては語呂もいいから宝探しと名付けたいわけだ。
けど、そうなると…
「鬼は必然的に俺ってこと?」
「まあねー」
おい。
「…わかった、じゃあ早く隠れなよ」
「はーい、あ、これ終わったら帰ろうね」
そう言ってタカは走っていった。
俺は、すぐそちらに背を向けて軽く空を見上げた。
傘から覗く空は、曇っていて、雨はさっきより止んだけれどまだ降っている。
しばらくして、はっとした。
これは、かくれんぼではないらしい。
だから、もういいよーという声がいつまでたっても聞こえない。
それくらい遠くに隠れたという可能性もなきにしもあらずだけど。
まあ、そろそろ、行こう。
順番に、人が隠れられそうな場所を探していく。滑り台の陰、木の陰、トイレの裏。
あらかた探したが、どこにもいない。
まさか、置いて帰ったなんてオチじゃ、ないよな…
どこいったんだ…?
なんだか、すごく心細い。
もし、ずっと見つからなかったら、どうしたらいいだろう。
始めてのかくれんぼ、誰かがやってるのを見たことはあったけれど、実際自分がやると、思ったよりずっと、
何かに急かされるような気分になってくる。
ないものを探してるような
そんな…なんか…
てか、俺もう中学生なのに…なんでかくれんぼとか…
帰ろっかな
こんだけ探してもいなくて、出てこないんだから、
だけど、こんな雨のなかもしあいつ一人で待たせたら、風邪をひいてしまう。
どうしよう。
ふと、気がつくと、雨が止んでいた。
さっきまで雲がかかっていたのに、夕方のオレンジ色の空が開けていた。
「あ、」
「あ、」
視界のなかに、入ったのは、
木の上で腰かけてるタカだった。